嚥下食とは ~嚥下食の分類を簡単解説~

嚥下食とは ~嚥下食の分類を簡単解説~

2022 ⁄ 04 ⁄ 01

嚥下食とは、加齢や病気、病気の後遺症などで食べものを飲み込む力が弱くなった人のための、飲み込みやすさに配慮した食事です。嚥下食は、飲み込む力のレベルに合わせて、やわらかさ、とろみ、口の中でのまとまりやすさ、べたつきの有無などを基に分類されています。

本記事では、嚥下食とその分類を簡単に解説します。

1.嚥下食とは

嚥下食は、高齢者、病気や病気の後遺症を持つ人など、食べものを噛みつぶして飲み込むことが困難な人のための食事です。嚥下食は、やわらかさ、とろみ、まとまりやすさ、べたつきなどに配慮して調整されており、通常の食事よりも誤嚥の心配が低いうえ、栄養状態の改善も期待できます(日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では「嚥下調整食」と呼ばれます

嚥下食は、食材をやわらかく煮含める、ミキサーにかける、ゼリー状にするなど、飲み込みにくさの度合いに合わせて分類され、段階的に使われます。

また、飲み込む力がおとろえても「口から食べる」ことは生きる力を回復する原動力になるとも言われます。嚥下食はそのための大切な役割を果たすと言えます。

 

■猫舌コラム ~嚥下食は流動食や刻み食とは異なります~

流動食は、病気や手術などで胃が弱くなった人のための液状のおかずや重湯(おもゆ)などです。また、刻み食は、飲み込む力はあるものの、歯に問題があったり、口を開きづらいなどの理由で食べものを噛むことが困難な人のための食事です。

いずれも、飲み込みやすさや誤嚥に配慮が必要な嚥下食とは異なります。

▼嚥下障害についてはこちら

▼誤嚥予防についてはこちら

2.嚥下食分類の基準

嚥下食を必要とする人が、病院、施設、自宅のどこにいても、噛む力や飲み込む力に合わせた適切な食事をとれるよう、食事のやわらかさや形を考慮する際の基準を専門家が定めました。

代表的な分類基準が、「嚥下調整食学会分類2013」「嚥下食ピラミッド」です。

嚥下食は、多くの施設や病院でこれらの基準を元にして調理され、また、自宅で調理する際のレシピ指導にも取り入れられています。

嚥下調整食学会分類2013

嚥下調整食学会分類2013では、嚥下食の形態を0から4の5段階のコードで分類しています。量や栄養成分については定めていません。そのため、「嚥下食ピラミッド」や他の治療食分類などとかけ合わせて使われます。

<嚥下調整食学会分類>

「嚥下調整食学会分類2013」より猫舌堂にて作成

嚥下調整食コード0 嚥下訓練食品

コード0は、栄養を摂取するための「食事」ではなく、あくまで嚥下の訓練をするための食品です。万一誤嚥してしまった場合の重症化リスクを下げるため、たんぱく質の成分が少ないものが推奨されています。

コード0j(jは「ゼリー状」をあらわす)

以下のようなゼリー状の食品です:

  • なめらか
  • べたつかない
  • まとまりがよい
  • やわらかい
  • 食べている途中に水分が出ない(離水が少ない)
  • スプーンで薄くすくい取れ、噛まずに丸のみできる

【例】お茶ゼリー、果汁ゼリー、市販の嚥下訓練用ゼリーなど

コード0t(tは「とろみ状」をあらわす)

以下のようなとろみ状の食品です:

  • なめらか
  • べたつかない
  • 適度なとろみがついている
  • まとまりがよい
  • スプーンですくってそのまま飲み込める

【例】お茶や果汁にとろみをつけたもの

嚥下調整食コード1

コード1からは、飲み込みの訓練のための食品ではなく、食事とみなされます。そのため、たんぱく質を含んでいても構いません。

コード1j

以下のような食品です:

  • なめらか
  • べたつかない
  • まとまりがよい
  • 水分が出ないゼリー・プリン・ムース状

【例】卵豆腐、重湯ゼリー、ミキサー粥のゼリー、介護食として市販されているゼリーやムースなど

※嚥下食0と嚥下食1については、ゼリー状の嚥下食から開始する人と、とろみ状の嚥下食から開始する人とに分けて分類されています。

■ゼリー状の嚥下食から開始する人の進め方 0j→1j→2-1
■とろみ状の嚥下食から開始する人の進め方 0t→2-1(1jも食べられる想定)

嚥下調整食コード2

コード2は、ミキサー食、ピューレ食、ペースト食と呼ばれる食品です。スプーンですくって口に入れたあと、噛まずに簡単に飲み込めるものです。上あごに舌を押し付けて食べものを飲み込める程度の嚥下機能が必要です。

コード2-1

なめらかで均質なもの。

【例】とろみ調整食品でとろみ付けしたペースト状の重湯、粒のないミキサー粥など

コード2-2

やわらかい粒などを含む不均質なもの。

【例】やや粒の残った、やわらかくべたつかないミキサー粥など

嚥下調整食コード3

コード3は、やわらか食、ソフト食と呼ばれる食品です。 歯や義歯がなくても舌でつぶしてのどに送り込める食品で、嚥下食2を食べている人より幅広い食品を、誤嚥せず飲み込める人が対象となります。肉や野菜などの固形の食材も、ミキサーにかけたりすりつぶしたりする必要はありません。

【例】 煮込みハンバーグ(つなぎを工夫したやわらかいもの) 、あんかけをした大根や瓜の煮物 、やわらかく仕上げた卵料理、 水分がサラサラではない三分粥・五分粥・全粥

嚥下調整食コード4

コード4は、歯や義歯がなくても歯ぐきで押しつぶせる食品です。 かたすぎず、ばらばらになりにくく、口の中に貼りつきにくく、箸やスプーンで切れるやわらかさです。

【例】 全粥 、軟飯 、誤嚥に配慮された移行食(煮込み料理など)


嚥下食ピラミッド

嚥下食ピラミッドは、飲み込む力が弱くなった人のための食事を、「普通食」から「嚥下食」までの6段階に分類したものです。 2004年に発表され、その後全国で利用されるようになりました。

上記で紹介した「嚥下調整食学会分類2013」では嚥下食の形態(やわらかさ、まとまりやすさなど)のみが定められていますが、嚥下食ピラミッドでは、一食あたりの量や栄養成分も定められています。そのため、「嚥下調整食学会分類2013」と嚥下食ピラミッドの2つの基準を元にメニューを決めるケースも多いようです。

<嚥下食ピラミッド>

参考:嚥下食ドットコム

開始食(レベル0)

均質で、飲み込もうとしなくてもスムーズにのどに送れる食品です。

【例】お茶ゼリー・フルーツゼリーなど

【一食あたりの栄養量】100ml,100kcalを基準とします。

嚥下食1(レベル1)

均質で、ざらざらやべたつきの少ないゼラチン寄せなどの食品です。

【例】重湯ゼリー・具無しの茶碗蒸し・プリンなど

【一食あたりの栄養量】300ml,150kcalを基準とします。

嚥下食2(レベル2)

均質ではあるものの、嚥下食1に比べてややべたつきがあり、口の中に貼りつきやすいゼラチン寄せなどの食品です。

【例】ゼラチン濃度の高いゼリー・分粥ゼリーなど

【一食あたりの栄養量】500ml,300kcalを基準とします。

嚥下食3(レベル3)

均質でないピューレ状の食品です。普通の食事に近く、嚥下食2と比べるとメニューの幅が広くなります。

【例】水ようかん、スクランブルエッグ、ゼラチン粥など

【一食あたりの栄養量】100ml,100kcalを基準とします。

介護食(レベル4)

ひと口大になりやすく、なめらかでパサつかない食品です。食べものを口の中でまとめて飲み込みづらい人が対象です。

【例】こしあん、かぼちゃの煮物(やわらかいもの)、魚のほぐし身(パサつきのないもの)、軟飯

普通食(レベル5)

ごく一般的な食事です。

【例】ひじき煮、五目豆、ロールパン、もちなど

3.嚥下食がスムーズに食べられるスプーン

嚥下食を必要とする方の中には、口を大きく開けづらい方も多く、通常のスプーンなどではスムーズに介助できないことが多いものです。

猫舌堂のオリジナルカトラリー「iisazy (イイサジー)」は、「口を開きづらい」「ごく少量ずつ口に入れたい」など、嚥下食を食べるご本人も、嚥下食の食事介助にあたる方も使いやすいよう設計されています。

「今使っている介護用スプーンの大きさや薄さが合っていないかも…」とお悩みの方は、ぜひ一度、iisazyのスプーン・フォークをお試しください。「くちびるが感動する」体験をお届けします。

「猫舌堂」のiisazy (イイサジー)

がんや麻痺などによって食べることに苦痛を経験した方々が、食べる喜びを取り戻すきっかけを作りたい。そんな思いから看護師やがん経験者のメンバーによってオープンしたのが猫舌堂です。

iisazy(イイサジー)は、口の中に入る部分は1mm単位で削りだし、口の中で感じる微妙なズレを何度も改善しながら開発しました。

生きることは食べること。

食べることは生きること。

家族や大切な人との食事がもっと楽しくなるカトラリー、嚥下障害がある方にも、そうでない方にも、「くちびるが感動する」体験をお届けします。

■iisazy スプーン(左)

一般的なスプーンは厚みと角度があるため、口に入れて引き抜くときに上くちびるに「ガチッ」と当たってしまいます。iisazyは薄く平たい設計なので、口が開きづらい方でも口から「すぅー-っ」と引き抜けます。

■iisazyフォーク(右)

iisazyスプーン同様、薄く平たい設計です。幅が狭くフォークの歯が浅いので、パスタなどの麺料理もちょうどよい量を巻き取れます。

イイサジースプーンを詳しく見てみる

4.「口から食べる」ことは生きる原動力に

嚥下食は、加齢や病気、病気の後遺症などで食べものを飲み込む力が弱くなった人のための、飲み込みやすさに配慮した食事です。

飲み込む力がおとろえても「口から食べる」ことは生きる力を回復する原動力になると言われており、嚥下食はそのための大切な役割を果たします。

病院や施設の看護師さん、栄養士さんなどと相談しながら、食べる方の飲み込む力(嚥下機能)に合わせた嚥下食を準備できるとよいですね。

また、嚥下食を食べる際には、食べる方も介助する方も使いやすいスプーンや食器を選ぶことで、よりスムーズな食事時間になるでしょう。

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